事例2 銅、金、レアメタルなどを探したい

背景:貴重な資源の確保のために

 酸化鉄型銅金鉱床(IOCG[1]型鉱床)は、成分である酸化鉄鉱物と黄銅鉱や斑銅鉱などの硫化銅鉱物でできています。 この鉱床には、銅や金が含まれており、他にもコバルト、ウラン、モリブデン、亜鉛、銀、希土類元素など、数多くの鉱物を伴います。 このように、IOCG型鉱床には希少な鉱物が含まれていますが、含有率が低いことから、採掘の対象ではありませんでした。 しかし、近年、IOCG型鉱床の発見が相次ぎ、世界中に広く分布していることがわかりました。 また、生産性も見込めるようになったことから、鉱床開発が進められています。 今後もIOCG型鉱床が発見される可能性が高いと考えられることや、コバルト、ウラン、モリブデンなどの非鉄金属鉱床も探査の対象と なってきていることから、IOCG型鉱床が注目されています。新たな価値が見出されたIOCG鉱床を見つけるためにも、広範囲を一度に調査 できるリモートセンシングを使った手法が求められています。

Fig02-00
オーストラリア クィーンズランド州
クロンカリー地域

現在の研究実績

 本事例では、オーストラリアのIOCG型鉱床を対象としました。このIOCG型鉱床には変質帯として火山岩類を伴っており、 緑泥石や角閃石、白雲母が多く含まれます。これらの鉱物のスペクトル特徴は、短波長赤外域[2]である1520~2420nmに現れるため、 この波長域のハイパースペクトルデータを使うことで、対象鉱物を抽出できると考えられます。 今回は、取得したハイパースペクトルデータのうち、短波長赤外域の42 バンド(水に吸収される1.9μm付近のバンドを除く) のスペクトルデータを解析に使用しました。このデータから連続体の除去と擬似反射スペクトルへの変換を行い、 特徴的な波長の変化点とスペクトルの形状を求めます。 得られたスペクトルの形状をスペクトルライブラリのデータと比較することで、鉱物の抽出に成功しました。 この抽出結果から、変質帯との関連が強い緑泥石+ 角閃石の分布図と白雲母の分布図を作成しました。 作成した分布図と空中磁気探査[3]などの物理探査で得たデータや、リニアメント解析[4]で抽出した断層の位置を組み合わせることで IOCG型鉱床有望地のポテンシャル(IOCG型鉱床を含む可能性の大きさ)を示すことができました。

期待される活用方法

広域探査の高精度化

 IOCG 型鉱床の地質の特徴が地域ごとに大きく異なるため、これまではIOCG 型鉱床を抽出する有効な方法の確立には至っていませんでした。 しかし、ハイパースペクトルデータを使用することで、鉱物ごとに見られるスペクトルの変化のわずかな違いを捉えることができ、 IOCG 型鉱床を特徴付ける変質帯の抽出が可能になってきました。 ハイパースペクトルデータから作成された緑泥石+ 角閃石の分布図と白雲母の分布図や、IOCG 型鉱床有望地のポテンシャル図は、 IOCG 型鉱床における有望地抽出の指標になりうると考えられ、探鉱への貢献が期待されます。

Fig02-01
白雲母分布図
Fig02-02
緑泥石+角閃石分布図
Fig02-03
クロンカリー地域のIOCG型鉱床有望地抽出図
Fig02-04
鉱物のスペクトル     

[1] Iron Oxide-hosted Copper Gold deposits の略

[2] 1.4~3.0μmの波長帯をいう。

[3] 航空機上から岩石の持つ磁気の性質に起因する磁力変化を測定し、地下の構造を推定する方法。物理探査の一つ。

[4] 地質構造を反映した大規模な線上構造をリニアメントといい、これを衛星画像や空中写真から抽出し解析すること。